絞り金型の基本的な構造 パンチ・ダイ・しわ押さえなど

前回の記事では「絞り加工のイメージ」について整理しました。

前回の記事はこちらをお読み下さい。

今回は金型側の部品と呼び方について取り上げます。

特殊構造やメーカー独自の名称までは扱いません。

目次

絞り金型を構成する主要部品

絞り金型にもいろいろな形があり、説明のときに名前が出やすいのは、材料を押し込む側・受ける側・外周を押さえる側です。

ここでは代表的な呼び方でそろえます。

※実物や図面では、部品名や記号が異なる場合があります。

パンチ(雄型)

パンチは、材料をダイの穴の奥へ押し出す側の部品です。「雄型」とも呼ばれます。円筒の絞りでいえば、筒の内側の形や底付近の形に関わる側だとイメージしてください。

形状や寸法によっては、パンチ先端のRやテーパ、段形状などが話題になりますが、この記事では「押し込む側の中心部品」という位置づけまでにとどめます。

ダイ(雌型)

ダイは、材料が流れ込む空間(キャビティ)を形づくる側の部品です。「雌型」とも呼ばれます。パンチとあわせて、製品の外周側の面に近い形状をつくる役割が中心です。

パンチとダイの間の隙間をクリアランスと呼び、この設定が絞り加工の成否を分ける重要なポイントになります。また、絞りでは材料がダイ面に沿って流れるため、面の粗さや肩部のR(丸み)も品質に直結します。詳細は図面とセットで見るのが一般的です。

しわ押さえ(ブランクホルダ)

しわ押さえは、絞りのときにブランクの外周(フランジ)付近を押さえる部品です。ブランクホルダと呼ぶ場合もあります。

外周の広い材料が、狭いダイの穴に引き込まれる際、どうしても材料が余って(圧縮されて)しわ(皺)が出やすくなります。それを防ぐため、押さえ力(クッション圧)のかけ方がよく話題に上がります。しわの原因や対策は、「外周をどう抑えるか」が絞り金型のポイントです。

※画像がうまく作成できませんでしたので、削除しました。

ストリッパ・ノックアウト・ガイドなど

ストリッパは、加工後に材料や製品がパンチに張り付いたままにならないよう押し戻したり、離型を助けたりする部品です。逆にダイ側に残った製品を下から上へ押し出して排出する部品をノックアウトと呼ぶこともあります。

また、ガイドは、パンチとダイの同心度や位置合わせを保つための案内部品に該当します。

金型の規模や方式によって、名称や構造はまちまちです。「パンチ・ダイ・しわ押さえ」が主役で、ストリッパやノックアウト類はそれを支える周辺と考えていただいて差し支えありません。

聞かれる「構造の呼び方」の整理

絞り金型の話をすると、「初絞り」「再絞り」「抜き絞り」といった言葉が出ることがあります。厳密な図面表現はさておき、会話で使われるときの意味として整理します。どれも「絞りそのもの」ではなく、工程の段階やブランクの入り方の違いを指すことが多いです。

形状や深さによる呼び方(円筒・角筒・深絞りなど)

製品の形状による分類としては、円筒絞り・角筒絞り・異形絞りの3つがよく使われます

丸いコップのような円筒絞りが最も基本的な形で、四角い箱のような角筒絞り、さらに複雑な形の異形絞りになるほど、材料の流れが不均一になり加工の難易度が上がります。角部にシワや割れが出やすくなるのも、こうした形状の難しさによるものです。

深さについては、直径(または幅)に対して深さが半分〜同等以上になるような加工を深絞りと呼びます。1回で無理に深く絞ると材料が破断してしまうため、後述する「再絞り」などで工程を複数に分ける必要が出てきます。

初絞り・再絞り・抜き絞りなど(工程の段階や構造の呼び方)

工程の段階を表す言葉として、まず初絞り(一次絞り)があります。多くの場合、いちばん最初の絞り工程、つまり平面に近いブランクから筒状に立ち上げる最初の段階を指します。「初めて奥へ流し込む」というイメージです。

それに対して再絞り(二次絞り以降)は、すでに筒状になったものをさらに深くしたり径を変えたりする後続の絞り工程を指すことが多いです。工程が複数になるほど、再絞りの話が増えてきます。

抜き絞りは、言葉の使い方が文献や会社によって別れますが、打抜きで外形を切り出したブランクを同一工程で絞るような説明のされ方をすることがあります。「抜き」と「絞り」が工程上つながっているイメージで覚えると、混乱が少なめです。

また、しごき加工(アイオニング)という言葉が出ることもあります。絞ったあとに、あえて狭い隙間を通して側壁を薄く均一に引き延ばす加工で、飲料缶などで使われる技術として名前が出ることがあります。

ここでは名前の整理にとどめます。実際にどの呼び方が当てはまるかは、工程構成と図面でそろえるのが確実です。

単発・順送・トランスファーなど生産方式の言葉

絞り金型の話をするうえで、「単発」「順送」「トランスファー」といった言葉が出ることがあります。これは絞りそのものの原理とは別に、「どういう生産の組み方で金型を載せるか」の区分に近い話です。

単発は、1工程ずつ、または単純な構成の金型で打つイメージに近い言い方です。試作や小ロット、工程が少ない製品などで話に上がります。順送(順送り)は、1台のプレスに載せた金型のなかで帯板がステーションを順に進み、抜き・曲げ・絞りなどが続く方式です。

そしてトランスファーは、並べられた複数の金型(工程)の間を、搬送装置(機械の手)が部品を掴んで順番に次々と自動で送っていく方式です。帯板のまま進む順送とは異なり、一つひとつの部品が切り離された状態で送られるため、順送では難しい深絞りや複雑な形状の加工に向いています。

同じ「絞り」でも、単発用の絞り金型なのか、順送ラインのなかの絞りステーションなのか、あるいはトランスファープレスに組み込まれる金型なのかで、金型まわりの構成は変わります。用語は生産方式のラベルだと捉えてください。


まとめ

この記事では、絞り金型についてパンチ・ダイ・しわ押さえを中心に、ストリッパやガイドなど周辺部品の役割までを整理しました。

続けて、初絞り・再絞り・抜き絞り・絞り落としといった構造や工程まわりの呼び方、および単発・順送・トランスファーといった生産方式の言葉にも触れています。

いずれも図面や工程表と照らして使う言葉です。部品の正式名称や構造の詳細は、金型ごとに異なります。

次回の記事では、工程が複数になる理由のイメージに加え、材料・潤滑など条件の話や、しわ・割れなど現場で名前の出やすい事象を、同じく入口レベルでまとめる予定です。

絞り金型については、植木製作所までお気軽にご相談ください。

次の記事はこちらをお読みください。

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